放射線治療について | 大阪府済生会吹田病院

放射線治療について

放射線治療とは

一般的には、手術療法、化学療法(抗がん剤)とならぶがんの治療の三本柱のひとつです。主に、がんに対する治療として行われますが、まれに良性の疾患に対する治療が行われることもあります。 病気の状態により、

  • 腫瘍細胞の根絶を目的とする根治治療
  • 痛みや神経圧迫など症状の軽減を目的とする緩和治療
  • 病気の再発を予防する予防照射

などを実施します。

放射線治療の利点

  • 治療中の痛みがない。
  • 手術をしなくてもよいので侵襲が少ない(手術を併用する場合もある)。
  • 機能や形態を温存できる。

が大きな利点でした。 ただし、今までは機器の能力に制限があり、正常組織にも腫瘍と同等の放射線が当たる範囲が存在します。 しかし、最新の治療機器を用いることで、病気に放射線を集中させ、副作用の軽減を図り、さらには治療成績の向上を目指す治療を行なうことができます。

 

つまり精度の高い機器を使用することで病気に放射線を集中させることができるため、他の臓器に優しい治療ができます。その結果、病気にはよりたくさんの放射線を照射することができ、治療効果もあがることが期待されるのです。

最新の治療機器

当院は2014年4月に高精度放射線治療装置(VARIAN/BRAIN LAB)の運用を開始します。 この装置は地面にX線管球が埋め込まれており、位置ずれが極めて少ない高精度な位置合わせを行うことができます。位置がずれてしまえば病気がない部位に放射線を当ててしまいます。精度が悪ければ精度を考慮して、余分な範囲に放射線を当てなければなりません。 高精度な位置合わせができるこの機器をもちいれば、上記のデメリットを極めて少なくする事ができます。 また、放射線治療医が病気にどれだけ放射線を当てたい、病気のないところにはどれくらまでしか当てたくない、という治療計画を忠実に実行する能力が非常に高い機器でもあります。 放射線治療計画装置や治療計画用CTなどの今や放射線治療の核とも言える周辺機器も最新のものに更新されており、安全で効果的な治療が行えるようになります。

 

高精度放射線治療装置(VARIAN/BRAIN LAB)
放射線治療計画用CT(SIEMENS)

照射範囲を細かく設定できる要因の一つに下図のMLC(マルチリーフコリメーター)があります。これは必要な範囲以外の放射線を遮蔽する金属ですが、細かく分割されているほど高精度な照射を行うことができます。

 

実際の照射野はこのように細かく設定できるわけですが、今までの機械との差をわかりやすく説明するためにモナリザの絵に当てはめてみました。

また、複数の腫瘍を同時に照射することができるようになったため、従来に比べて寝台上での治療時間が大幅に短縮されます。

一つの治療目標に対して、たくさんの方向から照射を行うこともできます。たくさんの方向から照射することで、標的臓器に放射線を集中させ、正常組織へのダメージを減らすことができます。

 

1.対向二門照射
2.三門照射
3.固定五門原体照射
4.七門IMRT(強度変調放射線治療)

放射線科では

放射線治療以外に放射線科は病気を見つける(治った事を調べる)画像検査、放射線を用いて病変を描出しながら治療のための薬を投与したり、病気の原因を取り除く IVR (放射線診断技術の治療的応用)を行っています。 当院では特にCT、MRIにおいて最新の機器を導入し、高画質・高品質な画像を、日本医学放射線学会が認定する放射線治療専門医が読影を行っています。 がんを早期に見つける事は病気が治りやすくなることにつながります。また治療したあと、定期的な検査を受けることにより、万一再発した場合にも適切な治療を受けやすくなります。

スタッフ

放射線治療室では放射線科常勤医師・非常勤医師1名(日本医学放射線学会認定放射線科専門医 4名)が連携を取り治療計画・診察を行っています。 連携大学と遠隔で治療状況を確認・修正できるシステムを構築し、安全性に配慮を行っています。
メディカルスタッフとしては診療放射線技師5名(うち照射専従1名、品質管理専従2名)、看護師4名が担当しており、診療必要人数が配置されています。資格取得状況は放射線治療専門放射線技師3名、放射線治療品質管理士3名、医学物理士1名、第一種放射線取扱主任者1名で更なる研鑽を積み事故防止、精度向上に努めています。

(2018年4月現在)

放射線科科長のコメント

がんになっても私たちは様々な方法で患者さんをサポートしていきますが、高精度放射線治療装置を導入したことにより、よりやさしく、効果的なサポートができると考えています。