慢性腎臓病(CKD)と腎不全について | 大阪府済生会吹田病院

透析センター - 慢性腎臓病(CKD)と腎不全について

トップ 診療科のご案内 透析センター

慢性腎臓病(CKD)と腎不全について

慢性腎臓病(CKD)と腎不全について

腎臓の構造は

血液をきれいにするためのろ過装置
腎臓から送り出された血液はおなかの大動脈を通り、枝分かれをして腎動脈に流れます。
腎動脈を通った血液は腎臓に入り老廃物を含んだ尿の素「原尿」ができます。
原尿は尿細管で必要な栄養やミネラル、水分を吸収し不要やものを尿をして体の外へ出されます。

慢性腎臓病のこともっと知って

慢性腎臓病(CKD)は、chronic kidney diseaseの頭文字をとったもので、原疾患によらず慢性に経過するすべての腎臓病を指します。
尿や血液、腹部超音波やCTなど病院や健康診断で行う検査で腎臓の機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される病気です。

腎臓の働き

  • 老廃物や余分な水分をろ過して、排泄をする
  • 体内の水分量やイオンバランスを調節する。
  • 血圧を適正にコンロトールする。
  • 造血ホルモンを分泌して赤血球をつくる。
  • ビタミンDを活性化させて、骨を丈夫にする。

腎機能が低下すると起きる主な症状

  • 手足がむくむ。
  • 体が酸性になる。
  • カリウムが高くなる。
  • 貧血になる
  • 血圧が上がる。
  • 骨がもろくなる。

CKDって何

CKDは慢性に経過する全ての腎臓病のことです。
糖尿病や高血圧などの生活習慣病や慢性腎炎、加齢などさまざまな原因で腎臓の機能が低下してしまった状態がCKDです。

どうやって調べるの

血液検査と尿検査で、腎臓機能の状態がわかります。
腎臓の働きを判断するのに利用する代表的な数値が、血清クレアチニン値で、血液中のたんぱく質の濃度で調べます。
数値の高い人は腎機能が低下していると考えられます。
もう一つはeGFR(推算糸球体ろ過量)という指標で、腎臓が1分間にどの程度、尿のもとを作ることができるかが分かります。
これは数値が低い人ほど腎機能が低下しています。
この2つの指標と尿中のたんぱく質から腎臓の状態を評価します。
健康な人なら100ml/分/1.73m2 です。
eGFRが60とは腎臓機能は健康な人の約60%に低下していると考えられます。

CKDの進行で現れる症状

  • 夜間の尿が増える
  • 立ちくらみや貧血が起こしやすくなる
  • だるさを感じる
  • 手足がむくむ、指輪や靴がきつくなる
  • 息切れがする

腎不全の症状

腎不全って何

腎臓病が進行して腎臓の機能が低下すると、慢性腎不全と呼ばれる状態になります。慢性腎不全が進行すると末期腎不全になります。
初期の段階では自覚症状がないことがあり、健康診断や他の病気の検査を受けて、初めて病気に気が付くことがあります。

どんな症状がでるの

  • 尿の異常(回数、量、色など)
    急性と慢性の腎不全では、人によって症状が異なることがありますが、共通する一般的な症状は尿の異常です。

    • 尿の回数・量
      腎臓には体の水分量を一定に保つ働きがありますが、機能が低下することによって、正常な働きができなくなり、さまざまな症状を引き起こします。
      腎臓でろ過されて最初にできる原尿は、1日に150リットル作られています。
      しかし、尿として排泄されるまでに99%がもう一度体内に吸収され、実際に排泄される尿は約1.5リットルとなります。
      腎不全になり腎機能が低下すると、再吸収ができなくなるので、尿の量が増えます。
      さらに症状が悪化すると尿も作る事が出来なくなり、今度は尿量が減ってしまいます。

      • 夜間尿
        腎臓が悪くなると、尿の濃縮機能が障害されることが多く、尿量はむしろ増え、尿が透明になることがあります。
        通常は夜間は尿を濃縮するため、夜間はトイレに行く回数が減りますが、この機能が低下すると、夜間トイレに行く回数が増えます。
        これは体のナトリウムが日中に排泄できず、体にナトリウムが貯まるため夜間の血圧を高くしてナトリウムを排泄しようとします。
        このために夜間のトイレ回数が増えます
    • 尿の色
      尿に血が混じると尿の色が濃くなります。これを血尿といいます。膀胱や尿道から出血をすると尿は鮮やかな赤色になります。
      糸球体からこぼれ落ちる場合はコーラ色に見えたすることもあります。
  • むくみ
    尿が出なくなると、体内の水分量が増え、体から水分が十分に排泄されないため体内にたまった状態です。
    通常は2~3㎏以上の体重が増加します。腎臓が原因となるむくみは通常、左右対称であり、むくんでいる部分と指で10秒以上強く押さえると、
    へこみます。最初は足首のくるぶし付近にみられます。体重が5㎏以上増えると、全身にむくみは広がり、肺の中に水がたまることがあります。
  • 高血圧
    血管内の水分量も増えるので血圧が上がり、心臓に負担がかかることで息切れや疲れやすくなります。
  • 貧血
    腎臓は赤血球を造る働きを助けるホルモン(エリスロポエチン)を出しています。
    赤血球は体中に酸素を運んでいるので、赤血球が減ると立ちくらみや貧血、動機、息切れといった症状がみられるようになります。
  • だるさ
    腎不全により体に毒素が蓄積したことにより起こる症状です、この症状を尿毒素症状といいます。
    腎機能が高度に低下しだるさが起こるときは、腎代替療法を検討する時期です。
  • かゆみ
    腎臓は体の中の毒素を尿に捨てる臓器です。腎臓が悪くなると毒素は、血液の中や皮膚に貯まり、皮膚の受容体を刺激してかゆみを感じます。

腎不全の原因と診断

腎不全の原因は

腎不全の原因となる病気で最も多いのは、糖尿病性腎症で、次に多いのは慢性糸球体腎炎、腎硬化症です。
慢性腎不全になると、腎機能の回復は見込めず、末期腎不全へと進行します。

糖尿病性腎症って

糖尿病が原因で起きる腎臓合併症です。
糖尿病は血液中の血糖が増えた状態です。血の中の血糖が高くなると、腎臓に血液を運ぶ血管と腎臓から血液を運び出す血管が広がります、そのため、腎臓に運ばれる血液量と運びだされる血液量が増え、腎臓には沢山の血液が流れ込みます。そうなると腎臓内の血圧が上がって過度の圧力がかかり、腎臓の細胞がダメージを受けて腎機能が悪化します。

慢性糸球体腎炎って

糸球体の炎症で、タンパク尿や血尿が1年以上続く病気の総称です。
糸球体は腎臓の中にあって、血液をろ過する役割をはたします。
腎硬化症は高血圧が原因で腎臓の血管に動脈硬化を起こした状態です。腎臓の血管は硬くなると,同時に狭くなり腎臓への血流がへることから尿が作られなくなり腎不全を引き起こします。

急性腎不全の原因は

腎不全の原因がどこに起きているかによって、腎前性、腎性、腎後性に分けられます。

  • 腎前性とは
    腎臓に十分な血液量が流れない状態です。他の病気などで血圧が下がると腎臓に流れる血液量が減り、尿が作られなくなります。 原因としては、脱水、大量出血、腎不全、重症感染症などがあります。
  • 腎性とは
    腎臓そのものに原因がある場合です。腎臓病のほか医療行為に関連したもの(手術、抗生剤、抗がん剤、造影剤など) 腎臓内の血管の病気など(腎梗塞、腎動脈血栓)があります。腎臓に流れる血液が減ると、酸素が腎臓の細胞に届きにくくなり 腎機能が悪くなります。
  • 腎後性とは
    腎臓で作られた尿は、尿管を通って膀胱に溜められ排泄されますが、その通り道を阻害されると尿は体の中にたまります。 原因としては、前立腺肥大、尿管結石、膀胱癌などが考えられます。 急性腎不全は慢性腎不全と異なり、適正な治療によって腎機能が回復する可能性があります。

腎不全の診断は

血液検査と尿検査をすれば、腎機能の状態がわかります。
腎臓に障害があると、血液中のタンパク質が尿に漏れ出すので、血中タンパク質を測定して腎臓の状態を検査します。
血液検査は、血清クレアチン値を調べます。腎臓の働きが悪くなると、血液中にある老廃物が、尿中に排泄できなくなり、血液中に溜まっていきます。血清クレアチニンが高いということは、腎臓のろ過や排泄がうまく機能していないことになります。

腎不全の治療について

CKDや腎不全の治療

CKDの治療は生活習慣の見直しが重要となります。禁煙や肥満の改善、減塩やタンパク質、カリウムの制限が必要となります。
腎機能の悪化によって引き起こされる貧血は、鉄剤や赤血球を造る働きを助ける薬を投与したり、骨折予防にはビタミンDの投与、血液が酸性になったら重炭酸ナトリウムの投与などがあります。

腎不全はどうやって治療する

急性腎不全

早期に原因を取り除けたら、腎臓機能を回復できる可能性があります。脱水や出血で腎臓への血流が低下している場合には、出血の原因となる病気を治療しながら、点滴や輸血で腎臓に血液が届くようにします。
腎臓の炎症がある場合は、炎症を抑えるためのステロイドや免疫抑制剤を使用するときもあります。

慢性腎不全

腎機能を回復させることが、難しいので、残っている腎臓の機能を維持することが、基本になります。
血圧を下げる薬や利尿薬、体にたまりやすいカリウムやリンを下げる薬、腎臓の炎症を抑えるためのステロイドや免疫抑制剤
腎不全の時期に現れる腎性貧血に対する注射などがあります。
食事は基本はタンパク質、塩分、カリウム、リンの摂取を制限します。
日常生活では過激な運動は避ける、疲れをためない、風邪など感染症に注意する、冷えないようにする、嗜好品はほどほどにして食事に注意しましょう。

腎代替療法とは

患者自身の腎臓だけでは水分他老廃物が処理しきれなくなったときに行う治療で具体的には移植か透析です。

1.腹膜透析のしくみ

腹膜内にカテーテルという管を入れて、透析液をおなかに入れ、一定時間ためます。
腹膜を介して毒素や余分な水分がおなかの中に移動します。その後透析液を体外に排出させます。
浄化能力が弱いので、毎日行う必要がありますが、毎日時間をかけて老廃物や余分な水分を取り除くことができるので体に優しい治療となります。
腹膜透析の方法には、CAPD(連続携行式腹膜透析)とAPD(自動腹膜透析)の2種類があります。

CAPDとは
1日に3~5回透析液を交換(バック交換)します。1回の交換にかかる時間は約30分です。
APDとは
主に寝ている時間を利用して透析液の交換を機械で行います。
CAPD、APDのいずれかは、ご自分の生活スタイルに合わせながら医師・看護師と相談をしながら選択します。
また、途中で治療法を変更することも可能です。
2.腎移植

腎移植は他の人の腎臓を体の中に移植することで、腎臓の働きを回復させる治療法です。

  • 献腎移植とは
    脳死後または心停止後の方で、生前に書面で本人の臓器提供の意思がある場合臓器提供されます。
    本人の意思確認ができないが、ご家族から承諾があるとき、臓器提供されることもあります。

    移植手続き
    移植をしている施設に紹介をします。その移植施設を通じて公益社団法人日本早期移植ネットワークに登録する必要があります。
    新規登録料30000円をコンビニエンスストア、もしくは郵便局で支払います。住民税の非課税世帯は、所定の手続きにより登録料が免除になります。
    登録後は移植まで毎年登録更新を行います。更新料は年5000円です。
  • 生体腎移植
    親・子・兄弟などの親族、または配偶者からて提供と受けます。移植が可能かどうか事前の検査が必要となるので臓器提供者(ドナー)候補者と一緒に移植をしている病院を紹介します。
3.血液透析のしくみ

腕の動脈と静脈とつなぎ合わせる「内シャント」をつくり、その血管に針を刺し機械のポンプを使って、血液を体の外に取り出します。
取り出された血液はダイアライザーというフィルターに運ばれ、毒素や余分な水分を取り除き、体の電解質を調整した後、体に戻されます。

  • ダイアライザー
    小さな穴が無数に開いた細いストロー状の膜を約1万本束ねたもので、体の毒素などを取り除く糸球体と同じフィルターの役割をします。
  • 血液透析は、週3回の通院が必要となります。通常1回4~5時間行われ、月に14回まで保険が適応されます。
    もともと腎臓は24時間働いているので、週12時間の透析は腎臓の働きの10~15%程度しか働いていないことになります。
  • ドライウェイト
    透析の時に設定される体重のことをいいます。
    体は水分、筋肉、死亡、骨で構成されています。筋肉や脂肪が増えると体重が増えます。
    しかし、尿が出ない場合は、余剰の水分が排泄されないので、水分が1L増えれば体重が1㎏増えます。
    ドライウェイトは皮膚の乾燥、むくみ、血圧、透析後の疲労感、胸部レントゲンなどで評価して設定します。
    体の状態に合わせてドライウェイトを修正をしていきます。

腎代替療法の準備はいつから始める

年齢や基礎疾患で変わりますが、一般的にはCKDステージ4になったら始めて行きます。余裕をもって準備していますが、これは選択までの期間を長く取ることで患者自身が納得のいく意思決定が出来るようにするためです。