あまり聞きなれない病気かもしれません。実は骨盤臓器脱は普通に出産した経験のある中高年女性の約半数に見られるとされ、昔から珍しい病気ではないのです。しかし症状が軽いと気づかなかったり、年齢のせいにしてあきらめていることが多いのです。
骨盤(お尻)の底をお椀のように支えている筋肉や組織がゆるくなり、立ち上がった時に骨盤内の臓器が腟管(産道)内に下がって押し出されてくる、女性だけに起きる病気です。(図1)脱出する臓器の種類によって子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤と区分されますが、組み合わさって起きることが多いため全体で「骨盤臓器脱」と呼ばれています。男性に多くみられる鼡径ヘルニア(脱腸)のような、女性特有のヘルニアの一種と考えられます。
子宮脱では下着がこすれて汚れたり、歩く時や立っている時に陰部に異物感が生じます。膀胱瘤では膀胱が敏感になり(過活動膀胱)尿が近くなったり漏れたりします。さらに進行すると逆に尿が出にくくなり残尿感を感じます。直腸瘤では便秘やすっきり排便できないなどの症状があります。
直接健康を害することはなくても運動や仕事、趣味や旅行が制限されるなど「日々の生活の質」がそこなわれる病気といえます。
妊娠出産回数の多い人、大きな赤ちゃんを出産した人、長時間の立ち仕事や肉体労働・肥満・便秘など、お腹に圧力のかかる人に多く、加齢や女性ホルモンの低下も関係しています。コルセットやガードルなどお腹を圧迫する器具や服装によって急に起きることもあります。
中高年女性の日々の生活の質をそこなうものに排尿の異常(尿が近くなったり漏れたり)があります。近年そうした症状と骨盤臓器脱には深い関連があることが解明され、総合的に診療されるようになりました。尿もれには主に腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の2つのタイプがあります。
せき・くしゃみ・運動などで不意に生じる尿もれで、骨盤臓器脱と同じく骨盤の底を支える筋肉のゆるみで起こります。出産後の若い時期から生じることがあり、症状の軽い場合は骨盤の筋肉をきたえる体操で改善が期待できますが、重症例には手術治療が有効です。
急に尿が出そうになり我慢できなくなる尿もれで、閉経後の高齢者に多く、膀胱瘤が原因となる場合もあります。有効な薬が開発されていますが、膀胱瘤などの骨盤臓器脱が原因であれば手術が有効です。
手術を避けたい人や持病のため手術できない人には腟の中に装着する矯正器具(ペッサリー)もありますが、一生通院が必要となるため、根本的な治療は手術になります。従来は主として産婦人科で手術が行われてきましたが、近年排尿症状との関連が解明され、新しい手術法が開発されるとともに泌尿器科でも盛んに行われるようになりました。
膀胱や子宮が下垂する腟管(産道)の周囲をメッシュ(人工素材でできた網状のシート)で補強する手術の開発で手術後の再発が少なくなり選択肢が大きく広がりました。一方で腟側から行うメッシュ手術(TVM手術)は傷からのメッシュ露出や性交渉の不具合の可能性があり、欧米では禁止される国もあります。また、お腹側から行う腹腔鏡下メッシュ手術(LSC手術)は手術時間が長くお腹の中で不具合が生じるリスクもあります。メッシュを使用しない方法ではそうしたリスクはありませんが、再発を予防するため腟管が狭く短くなり、性交渉が困難になります。その他にも簡易的な手術法があり、各々に長所短所があります。
骨盤臓器脱や女性尿失禁は生命にかかわる病気ではないため治療したいときに自分で治療法を選択できます。(図2)病気のタイプや重症度のほかに、年齢や生活習慣、性活動などに合わせて個々に適した治療法をご提案します。再発の少ない経腟メッシュ手術(TVM手術)や腹腔鏡下メッシュ手術(LSC手術)のほかに、メッシュを使用しない手術法でも再発を防止できます。ほかにも種々の手術方法やペッサリー治療も選択できることで、30代の若い患者さんや手術後に再発した患者さん、持病の多い高齢者などあらゆるタイプに対処が可能です。関連する尿もれや頻尿の改善を治療目標に総合的に診療し、尿もれ防止手術も行っています。
陰部の異物感や、尿が近い、尿もれなどの症状が気になる場合は一度産婦人科にご相談ください。
加藤 俊
産科科長(部長)
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