赤ちゃんの頭はなぜ変形するの?
そもそも、何故赤ちゃんの頭は変形するのでしょうか?
生まれる時にお母さんの産道を通るために、赤ちゃんの頭蓋骨は柔らかく数個の分かれた状態になっています。出生後に、1年から1年半をかけて頭蓋骨は繋がりながら成長します。ほとんどの時間寝ている赤ちゃんに向き癖があるといつも同じ頭の部位が接地して、平らになってしまうことで後頭部の形が変形(=頭蓋変形)してしまうのです。
この頭の変形を抑えるためには“うつ伏せ”に寝かせることが一番効果がありました。このため1980年代に世界中で“うつ伏せ寝”が推奨されました。
しかし、時を同じくして乳児の突然死が増加しました。未だに理由はよく分かってないのですが“うつ伏せ寝”は乳児の突然死の確率を上げてしまいます。突然死を予防するために、1992年赤ちゃんを“仰向け”で寝かせることが世界で推奨されました。その結果として、世界中で赤ちゃんの突然死は減少しましたが頭蓋変形をきたす赤ちゃんが増えてきたのです。
日本では最近まで頭蓋変形に対して何もしてきませんでした。だから、お母さんやお父さん世代では頭の形は誰でもある程度はゆがんでいることが多いのです。一方で欧米では頭部変形に関する研究が行われ、赤ちゃんの向き癖は治らないことが分かりました。そこで、頭蓋の矯正を行える方法として、頭蓋矯正ヘルメット治療が開発されました。
2007年にこの頭蓋矯正ヘルメット療法が日本に導入されました。
2013年には、日本の気候に適応しアジア人の皮膚にも優しい国産の頭蓋矯正ヘルメットが開発されました。関東ではこの治療法が普及し、2022年春までに7000人以上の赤ちゃんが矯正ヘルメット治療を受けています。
残念ながら西日本には矯正ヘルメット治療をする病院がほぼありませんでした。
そこで済生会吹田病院小児科では、赤ちゃんの頭の形で悩んでいるご家族の相談に乗ってあげられないか、と考えました。当然、我々も頭の形の専門家ではありません(というか、専門家はいません)。が、小児科の専門知識に基づいたアドバイスはしてあげられます。
そのうえで頭の形のゆがみを軽減したいご家族に矯正ヘルメット治療を説明させていただこうと思います。