対象疾患 | 大阪府済生会吹田病院

呼吸器内科 - 対象疾患

肺がん

肺がんは近年増加傾向にあり、現在我が国のがんの死亡原因の中でトップの疾患です。タバコとの関連がよく言われていますが、喫煙しない人にも肺がんは発生します。

 

咳、痰、血痰、息切れ、胸痛などの症状で発見されることもありますが、無症状のことも多く、定期的な検診が重要になります。特にタバコを吸われる方は、定期的なCT検査をお勧めします。

肺がんが疑われる場合には、気管支鏡検査を行い組織学的に診断します。当院では小さな病変やリンパ節の組織を採取する際には、必要に応じて超音波の併用も行なっています。また、気管支鏡検査以外にもCTガイド下生検などを行うこともあります。

診断後は病気の広がりや全身状態を評価して、呼吸器外科、放射線科とのカンファレンスの上、薬物療法、外科的治療、放射線治療を組み合わせた集学的治療を実践しています。薬物療法としては特定の遺伝子変異(EGFR遺伝子変異、ALK遺伝子転座、ROS1融合遺伝子、BRAF遺伝子変異等)の有無やPD-L1というタンパクの発現によって適応を判断し、従来の抗がん剤に加えて、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤など、患者さんやがんの状態に応じた治療を行なっています。
これらを含めた各種遺伝子変異検索のための、LC-SCRUM-Asia(国立がん研究センター東病院が中心となり行なっている他施設共同研究)や西日本がん研究機構(WJOG)等の研究グループが実施している臨床試験にも一部参加しています。
また、肺がんに伴う精神的・身体的苦痛に関しては、診断早期より緩和ケアチームとも連携して症状緩和に努めています。

間質性肺炎

肺の間質(肺胞隔壁および末梢の支持組織)に炎症がおこり、肺胞の壁の正常構造が壊れて線維化をおこすため、酸素と二酸化炭素の交換が障害される病気です。肺の機能が失われていきます。原因としては様々なものがあり、関節リウマチなどの自己免疫疾患、薬剤や健康食品、カビ(真菌)や羽毛などの吸入などが知られています。割合としては多くありませんが、慢性で原因が不明の特発性間質性肺炎は、難病に指定されています。
症状としては空咳や労作時の息切れなどがあります。
胸部レントゲンやCT、採血、呼吸機能検査などによる診断を行いますが、病因の検索のために気管支鏡検査や、呼吸器外科と連携して胸腔鏡下肺生検を行うこともあります。
治療法はその原因や病態によってことなりますが、必要に応じて抗線維化薬やステロイド、免疫抑制薬などの薬物療法や、酸素療法などを行います。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

以前は肺気腫や慢性気管支炎と言われていた病気ですが、近年になってタバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入することによって生じた肺の炎症性疾患として、こう総称されるようになりました。長年の喫煙などが原因で、気管支が炎症を起こしたり肺胞壁が破壊されたりして、肺胞でおこなわれている酸素と二酸化炭素の交換が不十分になり、咳や痰、息切れなどの症状が出てきます。

 

確定診断には呼吸機能検査を行い、気道が狭くなっている状態(閉塞性障害)の評価が必要です。また胸部CTで肺胞の破壊(気腫)の程度を確認します。

進行すると呼吸不全や心不全を起こし命に関わる病気ですが、初期の段階で病気を発見し、適切な治療を受ければ進行を食い止めることができます。

 

まずは早期に禁煙することが重要です。その上で薬物療法としては気管支拡張剤が中心となります。また、必要に応じて呼吸器リハビリテーションや在宅酸素療法なども併用して治療を行います。経過中に感染などをきっかけに “急性増悪”という呼吸状態の悪化が起こることが知られており、状況によっては非侵襲的人工呼吸療法 (NPPV)などの併用も必要となることがあります。

 

COPDは継続した治療が必要である他、心血管疾患や骨粗鬆症、糖尿病などを併発しやすいことが知られており、かかりつけ医との連携を行いながら治療に当たっています。
なお、早期の診断のためにも、40歳以上の喫煙者は、肺機能検査をできれば毎年受けることをおすすめします。

気管支喘息

発作的に咳や呼吸困難がおこり、ぜいぜい、ヒューヒューと喉が鳴ります。1日のうちでも時間によって症状に変化が見られたり、寒暖の差や運動によっても誘発されることがあります。小児期に喘息と言われたことがなくても、中高年になってから発症することもあります。適切な治療をせずに放置すると、重症化・難治化することもあります。治療の中心は吸入ステロイド薬であり、症状が強い場合には気管支拡張剤や抗アレルギー薬を併用して治療を行います。それでも症状がコントロールできない場合には、喘息に関与する好酸球やIgEといった物質を直接抑えるような新しい生物学的製剤の注射も行なっています。

なお、最近は咳喘息と言って、咳症状が長引き咳止めのお薬では良くならない病態も増えてきています。こちらに関しても通常の喘息と同様に吸入ステロイドを中心とした治療を行います。
慢性型の方は症状がおさまっても、治療を続けることで今後の症状の出現や増悪を抑えることができますので、継続した治療が必要です。安定期には、地域の先生方と連携をとっておりますので、かかりつけ医での治療継続をお願いいたします。

肺炎

気道や肺は直接外界と接しているため病原体が侵入しやすく、細菌やウイルスなどの病原体が侵入し、肺胞で炎症を起こした状態を肺炎と言います。主な症状は咳や痰・発熱ですが、高齢者の場合は症状が出にくいのが特徴です。

通常の肺炎に対しては血液検査や培養検査により原因の病原体の検索を行いつつ、抗生剤による治療を行います。また、ご高齢の方では脳血管疾患や加齢により嚥下機能が低下するため、誤嚥による肺炎を起こしやすくなります。そのような場合には、嚥下機能の評価や口腔ケアなども合わせて行なっています。

気胸

肺はスポンジのように空気を含んだ臓器ですが、表面は薄い膜で覆われています。この膜が破れることで穴があき、胸腔や縦隔に空気が漏れて肺が縮んでしまう状態のことを気胸と言います。
自然に起こる自然気胸は、やせ型の若い男性に多く見られる他、肺気腫などで肺の構造が脆くなった中高年の方にも見られます。また、女性では、月経に伴って気胸が起こることもあります。

程度や原因により、経過観察や胸腔ドレナージや自己血や薬剤の注入などによる内科治療を行いますが、再発のリスクも高いため、必要に応じて呼吸器外科へご紹介の上、手術を検討することもあります。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群は仕事の効率低下、高血圧や糖尿病、心不全など生活習慣病の悪化、交通事故などに関係することが知られており近年注目されています。
日中に眠気が強い、寝ても疲れが取れない、ご家族から寝ている間の呼吸停止やひどいいびきを指摘された方は、この疾患が疑われます。

当院では外来で簡便に検査できる簡易ポリソムノグラフィと、1泊2日の入院で行うポリソムノグラフィによる診断を行なっています。
治療としてはマスクで陽圧をかける持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行います。また必要に応じて口腔外科と連携してマウスピースの作成をお願いすることもあります。